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『2001.9.11 グァムの空港にて』
                                      服部清人

 このハガキが貴兄のところに届く頃には私達も無事に日本に帰国できていると思うのですが・・・・。なんだか思わせぶりな書き出しでスイマセン。私達はここグァムへ社員旅行に来ていたのです。日頃一生懸命頑張ってくれている社員をねぎらうささやかな旅行でした。すべての日程は楽しいものでした。みんな久しぶりに骨休めができたと思います。
「さあ、明日からまた仕事に頑張って下さいな」と、帰途に着くため空港へ来てはっぱをかけていたところへ第一報が入りました。詳しいことはわかりませんが、ニューヨークの貿易センターへハイジャックされた航空機が突っ込むと言う前代未聞のテロ事件が起きたことを空港のテレビとアナウンスが告げています。そのせいで私達の搭乗予定便も欠航となりました。今晩はここで足止めとなりそうです。
 こんな状況の中にあっても、私が気にかけているのは明日中にお客さんのところへ納品をしなければいけないということです。それも先ほどやっと連絡がとれて後日にしてもらいました。小さな部品なのですが、それがないと次の工程に進めないのです。世界が大変な時に私は休暇を満喫した上、明日の約束を気にかけています。私にとっての最大重要事項は明日の約束なのです。
 窓越しに見える照明の消えた飛行機のコックピットが物思いに沈んでいるようです。新たな歴史が動き出そうとしている、その片隅に居合わせたことを後ろめたさとともに感じつつ。     草々
      
       2001・9・11 グァムの空港にて  孝介拝
三木様



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