日本、今は昔ばなし16 
    
               働き方・勤め方・生き方(1)・(2)
                                                    ななえせいじ
働き方・勤め方・生き方(1)

 高齢化は人間だけではありません。高度成長期に公共工事を優先させてきた道路、鉄道などのインフラはじめニュータウンの住宅も老朽化しております。政府はコンパクトシティー化を促進しようとしておりますが一朝一夕に出来そうにありません。空き家だらけでゴーストタウン化していく地方都市の実体が見えてきます。なんでも所有者不明の土地は2016年時点で410万ヘクタール、九州本土よりも広いといわれております。
 かつての乱開発の付けが一気に都市のスプロール化を招き、町全体が活気を失いつつあります。例えば名古屋から新幹線に乗ってみると分かります。東京まで住宅が建て並び高速道路が貫きます。ここに電気ガス水道といったインフラを満遍なくゆきわたらせるとなればいかにお金がかかるかが分かります。ヨーロッパの街並みと全く違うように思います。同時にこれが高度経済成長の実態なのだと分かってしまうのであります。
 今夏の台風被害で帰宅難民が多数出ました。会社人間を自認するサラリーマンはどんなときにも会社に忠実でありますから、困難も厭わずこの事態を受け入れます。これが日本のサラリーマン社会であります。少し変と思いませんか。こんな場合、従業員は就業規則を無視していいと思います。仕事でもないことで疲れることをするのは割が合わないと思いませんか? この場合、会社は出社無用の指示を出すべきであります。会社の利益より従業員の健康を優先させるべきであります。その方が会社の優しさに触れかえって従業員の士気が高まり、長い目で会社の利益につながると思うのであります。
 ほんとうに優しい会社はどういう会社なのかを考えてみる時であります。
 ここに独善的ではありますが、私なりの事例を挙げてみますと、自動車メーカーのH社が思い浮かびます。私自身なんの関わりもありませんが、東京青山が本社のその会社は創業者の精神を今もって社風に生かされているように思うのであります。その青山の本社、建築時は土地価格だけでもべらぼうに高かったはずでありますが、伝説の創業者はビルの各階に一見無駄と思える頑丈なベランダを付けさせたのであります。「もし地震で窓硝子やらが路上に落ちたらなんとする」とその創業者は設計をやり直させたというのです。つまり企業の優しさとはこういうことではないかと思うのであります。台風に地震、災害の多いこの頃、企業はこの優しさを社風に持つくらいの心構えが必要と思うのであります。
 今どきの若者の就業感覚は一見忠実に見せて自己本位でありますから、なかなか一筋縄ではいかないと思うのでありますが、強い立場の会社側がこういう環境を整えるように努力することが大切と思います。
 健全な精神は健全な肉体に宿る、としたなら従業員の健康管理は最も大切であります。せっかく採用した新卒が3年以内に30%も転職するというのですからね。採用コストに見合っているとはとても思えません。(つづく)
                                    2018年10月6日

働き方・勤め方・生き方(2)  
                  
 経団連が就活ルールを見直そうとしています。いつでも就活が出来るようにするというのです。私にはよく理解できません。そもそも一斉ルールが社会通念にかなっているのでしょうか。賞味期限3年でしかない新入社員をシャカリキになって囲い込もうとする企業の心理が分かりません。その学生だってとりあえず就職しておこうかくらいでしかありませんよ。

 日本、今は昔ばなし。60年前、私とつるんでいた苦学生の話であります。彼とはよくアルバイトも一緒しました。いよいよ4年生になって、就活が始まりました。彼はわたくしと違ってよく勉強しておりましたので、ゼミの先生から推薦をもらって大手の機械メーカーにほぼ決まったかのようでありました。ところがその機械メーカーの先輩がゼミの先生に断りを入れてきたのです。彼は就活のチャンスを逃し同期の連中に遅れて小さな会社に入りました。彼のいいところは、恨みや愚痴をいわず持ち前のバイタリティーで頑張るところです。卒業後、ほぼ10数年が過ぎました。彼はいくつか転職した後で自分に会った場所を見つけたらしくある会社の幹部におさまっておりました。
 ところで世の中は景気変動、社会変化などから予期しない事態が起こるものであります。その最たるものはバブル崩壊でありますが、近時ではリーマンショクが日本経済に強く影響しました。日本のリーダー的企業の中からも倒産がでました。友人が袖にされたあの機械メーカーも会社更生法を申請する憂き目にあっていたのです。(因みにその会社は再建されて現存しております)

 私は学生の就活で卒業見込というスペックが理解できません。この頃ではわざわざ単位を残して就職浪人する学生すらいるといいます。見込とすることで新鮮なイメージがあるからなのかどうかわかりませんが、卒業見込みの人を既卒者に優先して採用しようとする企業の魂胆が分からないのです。何もかも確定する4月に入ってからでも遅くはないと思うからであります。
 そこで勝手な考えを吐露します。採用開始は4月にする。内定は9月までを見習い期間として「本採用内定」でインターン勤務させたらいいと思うのであります。卒業できずに落第する学生だっているでしょうに。どうしても卒業見込状態で採用を急ぐ意味が分からないのであります。
 学生はよく知っております。今の制度で採用内定が取れてさえいれば大学側は単位不足であっても温情で卒業(追試など)させてしまうゆるゆる規則があることを。つまり学生の本分など必要ないのであります。(思い違いがあればお許しを)
 学歴とはなんぞや? 3流大学の中退は軽蔑の対象でしかありませんが、一流大学のそれは日本では立派な学歴になるのであります。というのは日本の学歴社会は偏差値というメジャーによって構成されているからであります。例えば東大ならば、中退でも学歴になる。高校生が大学入試にシャカリキになる意味がお判りでしょう。そのうち「東大受験生」でも学歴になる時代がくるってか?まさか。
 もっと分からないのは、就活指定校制度。指定されてない大学の学生は応募すらできない。おかしくない? 私には企業の奢りとしか思えないのです。
 どうしてそうなったか、一応推察します。大企業の上層部に君臨する人は有名大学の学閥に育まれて実力といより調整力でのぼってきたからでありましょう。(異存はあろう)。その手の内はたくさんの役職を作り仲間を増やすことにあった? だからして、例えば大企業の組織は頭でっかちで指示系統が定まらず、間違いと分かっていても前例に従い改革は後回しにするという無責任体質のように見えてしまうのです。最近目にする不正、隠蔽事件しかり、その犠牲者は第一に従業員であります。
 中日新聞「この人」覧に「自分で幸福の基準を選択していくべきだ」と東大出の学歴を捨てて、寛容で優しい社会をつくりたいとして「どこでも移住」企画を立ち上げた若者が載っておりました。その人まだ27才、何も考えずに大手コンサルタント会社に入社して気が付いたという。目の前に自由があるのに社会は不寛容なままだと今社会を分析しております。
 この人の生き方に賛意を贈るが誰でもすぐに真似できるというものではありません。しかし考え方は参考にしていいのであります。人生100年時代、定年後も働くのでありますから、自分らしさが出せないまま一生終わってしまうとしたらつまらない人生じゃありませんか。

                       
                 2018年10月8日
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