年寄りのたわごと
                 あんたにいわれたくない―(11)
                                                    ななえせいじ

 一年ぶりだね。今日はたった三人かよ。みんなお元気そうで何よりですね。お互いついに80になってしまったね。三人というのは寂しいけど、A君、B君はどうしているのかな。Aはゴルフ、Bはジム。あ、そう?かわりないんだ。ところで、お茶の方はどんな具合なの?それがね、親しい茶友の初釜には行ったけど、恒例の初釜、月釜とかはほぼ中止になってしまったよ。もちろん自宅でする初釜は娘家族、息子家族、孫たちを集めていちようやりましたけどね。それがね、自宅といえどもコロナがありますからね、娘がうるさくてね、うつしてもうつされてもまずいからって、顔を見せてもくれない。それでも二日にわたってやりましたよ。一番忙しい思いをしたのはこの年寄り。さすがに齢を感じたね。自粛生活が知らぬ間に足腰を弱めていたってこと。こういう時の女房は天下よ。特に娘との会話が賑やかで楽しそうだった。孫は優しくてよく気が付くようになった。そしてこの年寄りは張り切って子や孫にお年玉を配っているってわけ。いや人生の生きがいって、こういうものだろうよね。それに大学生になったばかりの孫娘は可愛いね。どこまでも明るくて楽しそう。「じいちゃんのお茶はおいしい」なんて持ち上げてくれたりしてね。

 三人の近況報告が一通り済んだら話題がコロナに移った。この年寄りたちは国の取り組み方に対して厳しい意見を言いたい放題。どちらかと言えば批判的な意見に終始する。政治の世界は分からないが、専門家の意見を聞いて最善の手を尽くすというのが政治のありようなんだろうけど本当に最善だったのか疑問が残るよね。爆発的感染の推移をみるとなんで?となる。政権はここにきてずるいとしか見えないね。何かと専門家を免罪符にしている。これいかにも万機公論に決したように見えるが結果は後手にして面子?に拘った独断にして強権的じゃないの。例えば緊急事態宣言の発出は遅いと言われているのにやっていることはちっとも緊急じゃない、躊躇の挙句の宣言、結果は見ての通り、死者をいっぱい出し、失業者もいっぱい出し、事業閉鎖、倒産多発という思惑とは真逆の結果が生まれている。日本を疲弊させている。それに政治家と社会の認識のずれが気になるね。政治家の夜間遊興が問題になっているが、これでは国民は聴く耳持たないよね。コロナをなめているのか、バレないと思っているのか、あやまりゃすむと思っているのか、誘惑に負けてどうしても出かけなきゃならなかったのか、ただ人間の質的低下のせいなのか、どっちにせよ派閥の長が謝っておしまい。角界を見習ったらと思うけど、国民の代表だからって辞任もならず、派閥の領袖は頭数に拘るから襟を正すと言いながらも辞任させない。最後は自己責任ってことになるけど、これが一番当てにならない。
 とにかく国民による国民のための政治になっていませんよね。リンカーンが嘆くよ、きっと。間違いなく民主主義はゆがめられていく。この有事の際は、国家安穏のためには全体主義もやむを得ないかもしれない、と思う人いたら手を挙げなさい。三人は苦笑いするだけ。
 それじゃ罰則容認?
 勘違いしないでくれよ、罰則は夜遊びするような政治家にまず適用し、倒産危機のお店に対してすることじゃない。そんな法律を作る前に十分な補償の道筋をつけるべきだと思うがね。とにかく、最大与党の驕りと強権指向がにじみ出た法案と思いますよ。野党が修正してくれて
良かったよ。
 ではコロナを凌駕するには? 
 国民に寄り添って全体意見を汲み上げていく民主的なファッシズムなら緊急事態法案を容認しても良いような気がする。
 民主的ファッシズムってなんだよ。
 バイデン大統領は就任演説でデモクラシイーとユニテイを多用したよね、ここではユニテイ(結束)のような意味だってこと。ナチスの意味あいは全くないよ。
・・・?
 歴史は夜つくられ、赤坂の世はふけていく。
 それ皮肉? それじゃまたね、さいなら。
                         
               2021年1月30日
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