ニューノーマルの時代
                  玉虫色の解決はないのか
                                                    ななえせいじ

 伝えられるところオリンピック大会組織委員会の森さん後継選びが難航しているようです。多くの国民は日本の伝統的手法とまで見られていた密室の人事が思わぬ波乱を呼び、透明性がネックとなり候補者は挙がれども決まらない。この混乱は五輪開催が近づいているだけに国民に不安が広がっております。大体鶴の一声とか、禅譲とか、調整とかで密室で決まっていくのが通例でありましたよね。この混乱は日本的慣行からして過去にあまり例をみない。総理大臣を決めるにしてから派閥の力学とかいう不透明な過程を経て決まっているのだから日本ではこれが通例であった。実は私のような古い人間は川渕さんで決まりと思っておりました。ところが若い人も、働き盛りの人も、学生も、国民の多くが疑義を唱えたのです。自粛生活で考える時間が増え、ニュースを見る機会が増え、失業とか解雇とか、賃金カットとか生活不安を前にして、はっきり自己主張するようになった。こうしてNOと言える国民性が出来てきたのだと思えるのです。もはや国民は密室の決め事にすんなり納得いたしません。頼もしい国民性。これまさにコロナに端を発したニューノーマル始まりの一歩ではあるまいか。
 伝えられる候補者の悩める8人のどなたも遜色はありません。どう表現したらいいか存じませんが、崇高なオリンピック憲章に照らしますと、「帯に短し襷に長し」(お前に言われたくない)と不満を言う人もありましょう。
 この文章が出る前に事態は時々刻々動いております。本日17日の報道によりますと橋本聖子オリンピック担当相に一本化されるようであります。私の娘より少し年長でありますので可愛く見てしまいますが、最近の国会での答弁を聞いておりますとしっかりしている印象であります。少し小柄に見えますけれども帯にも襷にも間に合いますでしょう、きっと。当人の胸の内は、進むも地獄退くも地獄の心境でありましょうが、複雑な心中お察しいたします。オリンピック開催時期が迫っているだけに世界に向かって日本をアピールするには恥ずかしくない人選ではなかったかと思います。いずれ時が証明するでありましょう。でも明日のことは分からないまでも玉虫色の解決がなされることを期待します。
 日本にはいぶし銀という表現があります。又あかね色という表現もあります。オリンピックの金・銀・銅にあてつけたわけではありませんが、どうしてどうして橋本さんはオリンピックに夏も冬季も併せて7回出場しているすごい人(女)でありますよ。森さんのように多弁でないところに好感が持てます。他の候補者、荒川さん、室伏さん、山下さんなどなどどなたに対しても遜色なしであります。すぐ冬季オリンピックが来ますからね、スケートの橋本さんで一本化されて良かったじゃないですか。ここはすんなり決まってほしいよね。
 
 話変わって私は茶の湯世界に長年身を置いてきました。淡交会という裏千家組織の支部役員を十年務めてきました。定年後ですので暇つぶしと言っては失礼ですが、まったく違った世界に身を置いてみていろいろ勉強になりました。別に楽しくはなかったが、辛くもありませんでした。なぜ森さん問題と絡めて文章を書くのかと疑問にお思いでしょうね。ご存じのように茶の湯組織は圧倒的に女性の世界であります。でも「男の人が入ると会議が長くていけないワ」なんて言われたことはありませんが、「早く終わらないかな」と思ったことはあります。なんであなたが選ばれたの?と聞きたいでしょうから申し上げます。期中に欠員ができたのです。困ったベテラン役員が「定年で遊んでいるから」と私を名指ししたらしいのです。確かに少し暇を持て余していましたから「名前だけでいい」と騙されて?引き受けた次第。それから延々十年、男の子だからと道具運びや畳運び庭の掃除まで雑務仕事を言いつかりました。でも文句言わずに黙々とこなしました。現役時代は事業所の一つを任されていましたから多少の面子くらいはありましたが自尊心は心の奥にしまってこの世界では駆け出しと割り切って励みました。役員引退後はお茶会に年間50回ほど(コロナ以前)参加したお陰で皆に覚えられるようになりました。高齢かつ男子ということもあり、上座に上げられる機会も多くなりました。この頃は少し図々しくなっている自分に嫌気がさしております。いやいや森さんの話じゃありませんよ。「老害だとか、邪魔だ、と言うんでしたら掃いたらいい」(森さんのお言葉)などと吉本風に表現できませんが、せいぜい私は「老兵は静かに去るべし」と思っております。
                         
               2021年2月18日
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