ニューノーマルの時代
           転ばぬ先の杖ってどんな杖

                                    ななえせいじ

 桶狭間の戦いについて少し補足しておきます。桶狭間から南西部に向かって豊明、大府にかけて流れる川があります。鞍流瀬川と言います。戦いが開始される頃、つまり1560年5月19日、雨は小ぶりから本降りになり鞍流瀬川の水量は氾濫の危険さえありました。信長隊と今川隊、総勢約3万余の兵が激突したのですから当然多くの負傷者が出ます。川に堕ちた者、逃げ込んだ者、傷ついて倒れた者、見かねた近くの農民らが馬もろとも引き上げ助けたそうであります。戦い済んだ川には沢山の鞍が流れたといいます。これが鞍流瀬川であります。
 桶狭間の戦いは、信長の逆転人生を彷彿とさせる合戦でありました。志願兵の中にはこの機に乗じて出世を目論んだ者がいたとしても不思議はありません。寄らば大樹の陰と言います。志願するとしたら当然今川方でしょうね。しかし今川の敗北で当てが外れました。寄らば大樹もこの場合杖にもならなかったという次第。

〇先ごろ東北方面で震度5強の地震がありました。10年前の東日本大震災の余震だそうです。今盛んに言われているのが南海トラフだの首都直下型だの、であります。数十年内に起きるだろうとの予測があります。もしオリンピックさ中に首都直下型地震が起こったとしたら、との危惧は確かにあります。起きたら起きた時のことだ、との楽観論は禁物です。
 コロナ禍にテレワーク導入による在宅勤務がかなり普及しました。そのための仕事部屋を新たに設ける動きもあります。セカンドハウスというと聞こえが良いですが狭い日本の住宅事情が透けて見えます。しかし、地震に備えての避難場所と考えたら理解できます。東日本大震災による被災者がいまだに避難所暮らしという実情を見ると形を変えた地震保険と思えなくもない。この頃では一家で都会を脱出、田舎の空き家をリフォームして暮らす人が増えているそうです。主人は職場近くで単身生活、週末家族の許へ帰る。これいいね。転ばぬ先の杖とはこういう考えもありですよね。

〇コロナがもたらしたニューノーマル。急速に世の中に変化をもたらすのはリサイクルなど古くてもよいものを再利用して活用する考え方。マイホームに拘る人が多い。長いローンを組んで返済に追われながら手に入れた新築住宅が30年そこそこでボロ家になるという日本の住宅事情。ここは考え方を変えて地方の古家をリホームし田舎暮らしをしてみる。
 大切なのは騙されない日常生活を確立すること。つまりリスクマネージメントこそが一番であります。そのためにはリビングプラン(生活設計)をしっかりたてるとこと。
 テレビで水回り工事に絡むトラブルを特集していました。コロナで引きこもりがちな高齢者をターゲットにインチキ商談を持ち掛ける。引っかかった人は気の毒ですがもちろんひっかけるほうが悪いのですが、その前に自己管理が出来ているかが問題です。信用判断は普段の生活から十分できます。蛇口を変えるだけの簡単な修理さえできない便利慣れした都会暮らしの家庭。慌てて業者を呼んだ結果が高額料金を請求される羽目に、他人事ながら悔しいじゃありませんか。
日本は典型的な学歴や資格(士格・師格)の社会。この紋所が見えないかとした権威主義社会。つまるところペーパーテストによる仕分け社会なのです。
社会の仕組みをよく理解するのも転ばぬ先の杖と思うのですがね。

〇難しい用語がニューノーマルの社会を揺さぶっております。DX、SDGs、G5等々がそれ。限りなくデジタル化される社会。例えば自分という人間に番号が付され国に管理され、国との約束はすべて番号で処理される。代わりに本名以外のペンネームや芸名、通称は自由に使える。番号が付された国民も会社員も自分のことは自分で管理するセルフマネージメントの社会が来たのです。雇用契約はあっても就業規則は無くなるかも。すべからく個人が単位になる。その上社会の仕組みや制度も変異していく。生活地と仕事地とが厳密に棲み分けられていく。二重生活、三重生活が当たり前の複雑な社会。
 置いてきぼりを食うのは年寄り、とぼやく前に自分のことは自分でしよう。
                         
         2021年4月5日
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