年寄りのたわごと
                    あんたにいわれたくない(6)
                                                   ななえせいじ

 先ごろ働き方改革の目玉とされた「同一労働同一賃金」に関わる裁判で判決が出たよね。非正規の人がボーナスも退職金もないのは不当だと訴えたものだが、最高裁は必ずしも不当といえないとの判断を示したよね。これどう思う?
 理想と現実は違うからね。見方によっては妥当と思いましたよ。なんでか?それはね、当事者は同一労働と主張しますが、現場はそうじゃない場合が多い。正規と非正規とではまず入社までの行程が違うし心構えも立場も違う。正社員は常に労働に付加価値が求められるし、そこには厳しい成果と査定がともなう。非正規はその点気楽かもしれないよね。分かりやすく言うと人手不足を補うのが非正規なら人手余りを調整するのが正社員。わかりにくい? つまり使い勝手がいいかわるいかの違い。正社員は、経理処理上は固定経費、対して非正規は流動経費。言い方は悪いが人間と物扱いの違い。つまるところ非正規は雇用の調節弁。(失礼、例えの話)
 この両者の溝は埋まらないし初めからかみ合わないでしょう。別の見方をすれば正社員を削減し始めたらその企業の経営は厳しくなっているとみていい。
 だが一方で最高裁は、年末年始や夏季の休暇、家族手当、傷病手当などについて格差は不合理との判断を示したよね。業種業態によっても事情はそれぞれ違うでしょうが、水や空気の消費量は正規も非正規も同じはず。人間という起点に立てば妥当な判決と思うね。この種の手当は曖昧になり易いからシングルマザーもパパも救われるというものだよね。 
 急速に秋めいてきました。だがコロナにかき乱されているうちに早くも霜月も中旬になりました。
 平安時代の拾遺集にこんな歌があります。
 かくばかり経がたく見ゆる世の中にうらやましくも澄める月かな(藤原高光)
この世は住みにくい、でも月は澄んで輝いている、うらやましいね(勝手な解釈です)
一刻も早くいい世になっていてほしいよね。 

                        
                 2020年10月22日
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