日本、今は昔ばなし 
    
               ⑦危ない人間の見分け方
                                                    ななえせいじ

 就活中の学生の姿をよく見かけるようになりました。その一方で今春入社したばかりの新入社員の離職もこのころから始まります。五月病というのだそうです。
 裁量労働制問題など学生はもっと真剣にかんがえる時であります。
 しかし学生はブラックであろうとイエローであろうと有名企業ならどこでもいいとした志向でしかありません。それでは就職の理由付けが貧弱であります。
 その企業の労働環境、労働条件、働き甲斐などチェックすべき箇所がたくさんあるはずであります。出来ることなら就職する前からのミスマッチは避けたいものであります。
 採用する企業側の本音は、人手不足の頭数を揃え、内定時に誓約書を書かせ、社員教育で規格化してしまえば目的は達したとなるのであります。企業というところは従業員を社畜にしてしまえば社風は確立するのであります。
 そこで提案。真の会社選びは社会人となって10年位経験してからでも遅くない、と思うのです。現実社会のことがわかってから自分に合った職業を選ぶという視点に立つことは決して無駄な時間ではありません。いかがわしい職業以外だったらなんでもいいじゃないかと思います。人生は長いのです。有名企業、大企業に入ったからって勝ち組ではありません。職業に貴賤はありません、いかに自分が気持ちよく働けるかであります。

 日本、今は昔話。みなさまはご存じでありましょう。三船敏郎主演の映画「赤ひげ」の原作者山本周五郎さん。この人苦労人で、アルバイトをしながら小説を書いておりました。やっと文壇の目に留まり、第17代直木賞受賞者に選ばれました。が辞退するのです。多くの作家はこの賞欲しさに日夜努力しているのでありますから、もったいない話であります。周五郎さんはその後のすべての賞も辞退します。故に無冠の帝王といわれました。40才の時であります。
 参考にしてほしいのは、周五郎さんの価値観と世間の価値観が微妙に違うということであります。難しい判断であります。宮仕えのサラリーマンでしたら、自分を犠牲にしてでも上司との衝突を避けるでしょう。まずく振舞ったばっかりに干され左遷させられ、惨めな思いをすることになります。これがサラリーマン社会なのであります。

 日本、今は昔話、30年ほど前、バブル経済が崩壊し企業倒産が多発した時代がありました。その時はまだ経済は成長の余力があり、生まれる企業もけっこうあったのです。多死多産時代といっておりました。危ない会社の見分け方、とかいう講座が流行ったのであります。
 現在では、起業できる環境が整い多産時代が続いております。一方で大企業の下での中小企業や零細企業などは後継者なく事業を廃業してしまう事例が増えております。
 私は思います。大事なことは、あなたが企業内人間で、いわばその企業の人質でいる以上、社長とか上層部のミス、不正に気付かないで加担してしまっているということであります。その挙句が責任だけ取らされる。こんな光景、最近でも見たような気がしますよね。
 ヒト、モノ、カネ、それに昨今は情報が加わり企業経営の4元素といっております。しかし企業を司るのはヒトであります。大企業の不正、隠蔽が横行しているのを見るにつけても、結局はヒトなのであります。私は、危ない企業の見分け方よりも危ない人間の見分け方の方が大切と思っております。社会が複雑化し詐欺などのいろいろな誘惑もありますから、この辺の判断が大切なのであります。
 日本の企業社会は、上司の命令は絶対というのが組織を護るうえで必要だったのです。しかしこれは高度成長期の頃までで、今では大間違いであると思います。古い体質の企業はこれでは持たない。大企業の不祥事がこれを物語っています。そろそろみんなで改めるべきは改めていく会社組織にしていかなければならないでしょう。
 危ない経営者、つまり人間の見分け方は従業員みんなで共有していかなければその企業は崩壊していくでありましょう。
 危ない人間ってどんな人?個人情報保護法により、自分以外は皆未知の人という状況がつくられつつあります。だからして研ぎ澄まされた心のありようが必要なのであります。私は3つだけ挙げてみました。 
 〇嘘つく人 〇見栄っ張りな人 〇約束を守らない人 
 挙げれば百くらいにはなりそうですが、政治家、財界人、企業経営者、各種団体の役員、ボランティア、町内会まであらゆる組織にあって悪さをする人は、この3つに必ず通じているのであります。

                       
                  2018年4月10日
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