老人の主張25
             記憶にございませんは記憶にあります

                            
        ななえせいじ
 
                                         
「記憶にございません」とはロッキード事件(1976)で実業家小佐野賢治が国会でこう証言した。流行語になった。実際は「記憶が」であったらしい。
 最近の凶悪事件の犯人も警察の調べに対し「覚えがありません」と容疑を否認するらしい。こういうのを報道でみますとやり切れません。
 長野県で起こったスキーバス転落事故。
 バス会社の代表者は「運転手が事故を起こすとは思わなかった」とまるで他人事のようにいいます。責任者ならば「安全管理を怠っておりました」とまず反省の言葉が先に出るはずです。事故から時間が経過しますとだんだん自分を慰める方向に行くようです。人間のサガというものでしょう。潔くとはいかないらしい。兎に角事件、事故が多すぎる。やはり世間は病んでおります。
 ショッキング事件は自衛官の発砲殺害事件。犯人はまだ18歳。「鉄砲と実弾を自分のものにしたかった」「それを持って外に出たかった」と証言しています。完全にアニメの世界におります。現実と空想の区別がつかなくなっているのでしょうね、きっと。
 猟銃で警察官と近所の主婦を撃ち殺した長野の事件。犯人のこの時の行動真意は分かりません。恨みなのか鉄砲を試して見たかったのか、鉄砲の保有許可を取っていたというのだから、「気違いに刃物」という警句そのものではありませんか。
 多発する凶悪事件。交通事故も含めこの世は危険に満ちているのです。
 社会の背景は暗くて生活そのものが厳しくなっております。
 どの業界も企業間競争が激しくて経営環境は厳しい。加えて人手不足で労働環境も劣悪で過酷。日々の暮らしに追われているのが現実。
 日本の国民性はまじめ。しかしここに至って人出不足から外国人労働者が増えました。その上超高齢化社会と少子化から人口減が深刻な国家的課題となっております。世界情勢は戦争が勃発するやもしれないきな臭さが漂ってきました。おまけに日本は戦争を知らない世代が大勢を占めます。ウ・ロ戦争は決して遠い国の出来事じゃありません。
防衛予算増額をどう思うか。
 今こそ大人たちが世の中を冷静に受け止める時であります。防衛費を増やし軍備に備えることが果たして平和につながるものでしょうか。戦中生まれでいくらか戦争を知っているこの老人は将来を憂えているのであります。

                 
2023年6月24日
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