ななえせいじのエッセー             
         
      末は博士か大臣か 国会議員の野望  

    
                          
       ななえせいじ
 
 
 末は博士か大臣か、というのは菊池寛にまつわるお話です。人間誰しも出世欲は持っております。かの菊池寛は大変な努力家であったといいます。さて現実の話、少数政党が乱立し最大与党と連立を組んであわよくば大臣に滑り込みたいといった野心が野党議員に垣間見られます。野心は良いとしても並み並みならぬ努力が伴うのだと申し添えておきましょう。むかし村山富市という野党党首(社会民主党)が当時の自由民主党と連立を組んで担がれて第81代総理大臣に就任しました。1994年のことで正確には自社さ3党の連立政権であります。村山氏は見るからに朴訥とした真面目な政治家で今の国会議員のようにギンギラギンといった印象ではありませんでした。
 前回からの続報。与党は政治資金規正法の抵触をはじめ不祥事で政務補佐官を辞任したとかで傷だらけであります。おまけに政策に期待が持てないとかで岸田政権の支持率は低迷し崖っぷちに立たされております。西も東も真っ暗闇じゃあありませんか。この異常事態に小さな党であっても連立に与すればかつての村山さんのように総理にあるいは大臣になれるかもしれないとした野望が国会議員のどなたにも透けて見えます。それはもはや政治活動じゃありません。そのごたごたに予算編成に遅れがあったとしたらそのとばっちりを国民が受けます。少しばかりの減税余禄で国民は目くらましにあってはなりません。
 ただでさえ国民は生活困窮状態にあります。まず若者は安心して働くところがありません。非正規労働者ですからいつ雇止めに遇うかも知れません。高度成長期には考えられない不安定な環境に置かれております。その雇止めが年間10万人以上もあるのだと言います。末は大臣か博士という格言はどこの国の話? 今の若者は「せめてなりたや正社員」というのですからね。ここまでにしたのは政治家の責任ですよ。令和新選組党首の山本太郎さんが国会討議の場でいろいろな数字を挙げておりました。それによると国民の生活に関わる数字は先進国の中でも酷い位置におります。かつての黄金のジパングはどこにいったのでしょう。恥ずかしい限りであります。能ある若者はこぞって海外へ跳び出していきます。残ったのはカスばかり。政治家は国民に選ばれたエリートのハズなんですから頑張って政策面から国民の地位を上げてほしい。自我を捨て国民のために働いてほしい。
 前にも書きましたが、安倍さんが凶弾に斃れた時、老人の間では冷ややかな見方がありました。ある年配のご婦人は「同情しません、私は嫌いでした」とはっきりおっしゃった。その時私はいささか驚き、他の人にも聴きましたらなんと同じ感情の人が多かったのです。あれほど偉大な政治家の真逆の評価に驚きました。その安倍さんの負の部分が今になって噴き出し始めたのですから案外正しい見方だったのかも知れません。あとは赤ひげにあやかって小石川療養所で治していただきましょう。
 話変わって今日12月4日はアフガニスタンで凶弾に斃れた医師中村哲さんの命日であります。あの衝撃的な事件から4年が過ぎました。報道によりますと中村さんの用水路工事が来年3月にはいよいよ完成するというのです。中村さんには過去に実績があります。砂漠に総延長25キロにも及ぶ用水路を造り現地の農民約10万人の暮らしを救ったというもの。アフガンの政治的事情は分かりませんが宗教的事情もあってそれぞれであります。間違いなく中村さんは現地の人々に見直されております。死せる中村生きるアフガン為政者を動かすとも例えられる。兎に角4年が経って現地の空気も変化しつつあるようです。
 読者の皆様、安倍さんと中村さん、立ち位置が違いますから比較しないでくださいね。

                                 
2023年12月5日
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