ななえせいじのエッセー             
          
末茶会と世相 師走茶会もまた楽しからずや 
        なにせ茶会の客人も高齢化しております。茶会の有様は景気の先行指標になる  

    
                          
       ななえせいじ
 
 
 年の瀬も師走半ばを過ぎれば人々の動きはあわただしくなってきます。例えば茶会という行事、12月8日はお釈迦様が悟りをひらいた日であります。それにちなんだ話題や道具組が席中をにぎわせます。そういうわけでテーマを組みやすいからか師走に市井の茶会も集中いたします。
 例えば7日のある茶会での床の間の掛け軸は墨蹟の「殺生」。席主の説明ではウ・ロ戦争とイスラエルでの戦争で多数の死者がでています。これらの死者を悼みかつ戦争終結を願ってこの軸を掛けたのだといいます。花入れ(竹の二重口だったかな)の銘が「閻魔」と言い茶席に花を添える。いずれ戦争犯罪人は閻魔さんに裁かれるだろう。
 さて14日は別に大きな茶会がありました。この席の掛け軸は無学宗衍筆の横物「地獄」とあります。赤穂浪士四十七士は吉良上野介を討ち果たし本懐を遂げます。だが浪士達は失敗が許されないリスクを背負い皆必死であります。上野介を討ち果たせなかったら幕府から「世相を揺るがした大罪人」と裁断されます。それと分かっておりますからどうあっても本懐を遂げなければならない。討ち入りが成功したことで浪士達の心模様は「地獄から天国」へと変わります。よってこの掛軸の謎かけが分かるのであります。脇床の掛物は大高源吾が原惣右衛門に宛てた消息であります。討ち入り一か月月ほど前の霜月15日となっております。内容は分かりませんが討ち入り決行は当初12月6日でありました。吉良家の茶会の日延べによって12月13日に変更になります。茶会の日取りの探索は大高源吾が担っておりました。源吾は宗徧流茶を能くし俳諧にも精通した一流の文化人であります。この消息はこのあたりの情報伝達を同士の原惣右衛門に宛てたものではなかろうか。(勝手な推測です)。
 安定した茶道人口減少と高齢化と相まって茶の湯愛好家は自然に減少しつつあるようです。果たして政府の少子化対策が功を奏するとしたら子供たちが成人する20年先くらいになるのではなかろうか。俗に10年ひと昔と言うがここは20年ひと昔であります。これを打破するにはどうすればいいか。ここは茶の湯を教育現場に持ち込む以外になかろう。
 話変わって師走の3日、武者小路千家の名古屋道場開設10周年記念茶会がある料亭でありました。私は裏千家ながら薦めてくれた人がいて飛び入りで参加しました。運よく若宗匠と同席になりました。お話によりますと、宗家の歴史的に貴重な施設も老朽化が目立ち修復しなければならない状況にあるとのこと。そこでクラウドファンデングという手法を用いて広く資金援助を仰いでいるのだという。若宗匠は人気が高くすでに数千万円が集まっているとか。私も裏表なくほんの気持ちだけ協力することにしました。
 現状茶道界は少子化の影響を受けて苦境にあります。加えて人口減は産業界の大きな課題です。これはもはや試行錯誤の余地はありません。政府の取り組みにかかっております。これまでのバラマキ手法ではダメ。もっと働きやすくかつ働き甲斐のある職場環境を整えることです。国民に労働の歓びを呼び戻すことです。その方が安上がりですよ。(いろいろ失礼の段お許しください)   本日はここまで。

                                 
2023年12月21日
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